・転勤はいつ決まる?内示や辞令は何日前にわかる?
・転勤が近いときのよくあるサイン
・転勤は拒否できる?

私、転勤が決まったかも……



転勤はどのくらい前に言われるの?引越し準備、間に合うのかな



転勤を断ることはできる?家族のこともあるし……
そんな不安を抱えていませんか?
異動の時期が近づくと、職場の雰囲気がざわついたり、上司や同僚のちょっとした発言が気になったり……「もしかして自分も?」とそわそわしますよね。
実際、転居を伴う異動は、異動日の1ヶ月以上前に内示がでる傾向があります。転居は時間を要するため、転居を伴わない異動より、早い時期で通知されることが一般的です。
この記事では、転勤がいつ内示されるのか、転勤前に現れがちなサイン、拒否できる可能性まで判例を交えてわかりやすく解説します。
これを読めば、今後の動きがイメージしやすくなり、気持ちを落ちつかせることができます。
本記事のライター:伊藤えま
採用・人事歴10年以上。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)取得済み。採用統括責任者として現場で得てきたリアルな知見を、発信している。
転勤はいつ決まる?内示や辞令は何日前にわかる?


転居を伴う異動の内示は、遅くとも異動日の1ヶ月以上前に通知されるのが一般的です。転勤は転居先の物件選びや契約、引越しなど準備や手続きに時間がかかるため、たいていの企業では転居を伴わない異動より早めに内示されます。
海外への転勤などの場合は、さらに早い3〜6ヶ月前に内示されることもよくあります。
日本の企業で異動が多い4月と10月のそれぞれの内示・辞令時期を見てみましょう。
4月の異動はいつわかる?
4月の異動では、早い企業では1月下旬〜2月上旬、遅くても3月上旬には内示されることがよくあります。
多くの場合、3月中旬〜下旬に正式な辞令がでて、4月1日から異動先に配属されます。
10月の異動はいつわかる?
10月の異動は、8月下旬〜9月上旬での内示が一般的です。会社によっては、お盆明けの早い時期に内示があるケースもあります。
たいていの場合、9月下旬に辞令が発令されて、10月1日付で異動になります。
内示と辞令の違いとは
内示と辞令は同じく異動や配置転換でよく使われる単語です。ですが「公式」と「非公式」での違いがあり、内示→辞令の順で通知されます。
・内示
「内々にあらかじめ知らせる」との意味で、正式な発表である辞令の前にされる非公式な通知です。通知方法は、上司から口頭もしくはメールでされるケースが多く、書面で渡されることはほとんどありません。
多くの人が辞令を待たずに、内示の段階で転勤の準備を始めます。
やむを得ない事情があり転勤を断りたい場合には、このタイミングで会社へ相談をしましょう。
・辞令
辞令は会社からの公式な人事命令となり、正式な命令として法律上・就業規則上でも効力がある通知です。異動辞令書など書面で従業員へ通知するのが一般的です。
この段階での転勤拒否は、原則として難しくなります。
転勤の時期は会社ごとにバラバラ


新年度を迎える4月と、上半期のスタートにあわせた10月は転勤を伴う異動が最も多い時期です。しかしながら、企業ごとの人事異動の時期には違いがあります。
企業の決算時期にあわせて事業計画・組織改編をすることが多いため、決済時期により異動の時期には差があります。また、企画の人員配置を目的とした場合には、年度の途中でも異動が発生します。
業界によっても異動時期や頻度に違いがでる場合も。たとえば、IT業界ではプロジェクトの進捗によって柔軟に異動が行われることも珍しくありません。
転勤が発生するタイミングは、企業や業界によって違いがあることを覚えておきましょう。
転勤が近いときのサイン4選


転勤が近くなると、上司や同僚など職場に変化が見られることがあります。
- 突然の上司面談
- 上司や同僚からの異動をほのめかす発言
- 業務の引継ぎを意識した動き
- 周囲の噂
それぞれ詳しく解説します。
突然の上司面談
上司から突然、面談や1on1などに呼ばれると転勤が近いかもしれません。内示が決定される前に、本人の意向を確認する目的で面談が実施される場合があります。
子供や家族の近況など家族の状況や、希望勤務地などを雑談のような会話の中で確認するような内容が増えやすくなります。
上司や同僚からの転勤をほのめかす発言
「〇〇の職場の方があっていると思うよ」「▲▲のプロジェクトに向いていそうだね」などの発言にも注意を払いましょう。上司や同僚が転勤をほのめかす発言をするようになったら、転勤かもしれません。
こうした発言には、本人の反応を探る目的があります。
突然の内示で驚かせるのではなく、事前に「あなたに合っていそうな仕事がある」と伝えておくことで、転勤を前向きに受け入れてもらいやすくなるのです。
あらかじめ、いい話として伝えておくことで、内示を出すときにスムーズに話が進む効果も期待しています。
業務の引継ぎを意識した動き
担当している業務を確認されたり、資料をまとめるよう指示されるなど業務の引継ぎを意識した動きもあります。転勤に伴って業務の担当者の割り振りや、後任の人選などの準備が始まっているからです。
「この案件は〇〇さんにも進捗を共有しておいて」など今までと違う指示があった場合には気にしておきましょう。特に思い当たる理由がない場合は、転勤の可能性も頭の片隅に置いておくと気持ちの準備ができます。
周囲の噂
同僚など周りの人から「あなたが転勤と聞いたよ」と言われることもあるかもしれません。上層部や人事の一部から情報が漏れている場合があり、噂として人づてに聞くことがあります。
確証はなくなんとなく聞いた程度のことが多く、軽いノリで話していることもあるため、真に受けすぎることがないように注意しましょう。噂の段階で転勤の準備をしてしまうと、実際に転勤がなかった場合に無駄な時間となりかねません。
内示されたタイミングで転勤の準備をはじめれば確実です。
転勤は拒否できる?法的な観点で解説


転勤は引越しを伴うことから負担に感じる方は多く、拒否できるか気になる方もいるでしょう。拒否できるかについて法的な観点でわかりやすく解説します。
法律上の観点
会社との契約内容により違いがあり、労働契約で転勤がある条件での契約をしている場合は、原則として拒否は難しくなります。正当な理由なしの拒否は、契約違反として懲戒対象になることがあります。
雇用契約書に「転勤あり」と明記がある場合には、転勤になる可能性も承諾した上で契約を結んでいると見なされるからです。
就業規則に転勤の可能性について規定している企業もあります。具体的には下記のような条文で明記されています。
会社は、業務上の都合、若しくは従業員の適性により必要あると判断した場合、従業員に対して、異動を命ずることがある。会社が正当と認める理由がない限り、これを拒むことはできない。
断ることを検討しているときには、雇用契約書と就業規則の内容を今一度確認しましょう。
拒否が認められる可能性があるケースとは
転勤については、社員の立場から「行きたくない」と拒否が認められるケースもあります。会社には「必要な場合にだけ転勤をさせるべき」との前提があるため、必要性がない転勤や、社員に大きな負担がかかる転勤は、拒否が認められた例もあるのです。
特に、以下のような理由があると、拒否が認められやすくなります。
- 業務上の必要性がない
- 不当な動機や理由がある(嫌がらせなど)
- 本人や家族に重大な不利益がある(本人の病気や家族の介護など)
過去の判例には、転職命令が無効と判断された「ネスレ日本(配転本訴)事件」があります。
この事案では、会社が従業員に対して転勤を命じ「転勤に応じるか、退職するか」の選択を迫りました。
しかし、従業員には要介護認定を受けた家族の介護が必要との事情があり、転勤を拒否。そのうえで、転勤命令の無効確認などを求めて提訴しました。
高等裁判所は、今回の転勤命令が「通常、労働者が受け入れるべき範囲を著しく超える不利益をもたらすものであり、配転命令権の濫用にあたる」と判断し、転勤命令を無効とする判決を下しました。
引用:転勤に関する裁判例 参考資料5(厚生労働省)を加工して作成
転勤が決まったら引越しはいつから動く?スケジュールの目安


辞令は異動日ギリギリの通知となることがあるため、内示されたタイミングで行動開始するとスケジュールに余裕ができます。異動日までの残り日数ごとにやることを見ておきましょう。
- 業務の引継ぎを考慮して引越しする日を会社と相談
- 新居の物件探し・契約
- 子どもの転校など必要な手続きの洗い出し
- 引越し業者への依頼
- 賃貸の場合:現住所の解約通知
- 必要な手続きの準備(必要書類の取り寄せなど)
- 引越し先の電気・ガス・水道・ネット回線の手続き
- 現住所の電気・ガス・水道・ネット回線の解約(解約する場合)
- 荷造りスタート
- 冷蔵庫の中身を整理
- 貴重品・重要書類の整理と持ち運び準備
- 挨拶まわり(必要に応じて)
よくある質問
転勤についてよくある質問をまとめました。
- 転勤先への事前の挨拶は電話でも良い?
-
直接挨拶に行くのがベストですが、距離がある場合やスケジュール的に難しい場合には電話でも失礼にはあたりません。
電話での挨拶となった理由を挨拶とあわせて相手に伝えましょう。
- 転勤の辞令を受けたあとに退職はできる?
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転勤の辞令を受けたあとでも退職することは可能です。
日本の労働法上、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。
しかしながら、転職の辞令が出た直後に退職を申し出ると、職場との関係性がこじれる場合があるため、話し合いは丁寧に進めましょう。
- 転勤による引越し費用は会社が負担してくれる?
-
多くの企業では転勤に伴う費用は会社が負担します。
ただし、企業によって負担する内容や上限、条件に違いがありますので事前に確認しておくと安心です。
まとめ
この記事では、転勤が通知される時期について解説しました。
企業により多少違いはありますが、たいていの企業では転勤は遅くとも異動日の1ヶ月以上前に内示されることが一般的です。
内示されたタイミングで転勤の準備を開始すれば、余裕をもったスケジュールで進めることができます。
転勤の内示におけるスケジュール感を把握して、心の準備を整えましょう。

