・人事事務とは企業の人材戦略を支える仕事
・労務・社員サポートの幅広い業務に関わる
・未経験でもスキルを積めばキャリアアップ可能
・将来性が高く需要が伸び続ける職種
「人事事務って具体的に何をするの?」
「未経験でも挑戦できるの?」
「将来性はあるの?」
転職を考えて求人を見ていると、こんな疑問を持つ方も多いはずです。未経験だと仕事のイメージもしづらいですよね。
本記事では、人事事務の立ち位置や業務内容、向いている人の特徴、平均年収、キャリアパスと今後の需要までわかりやすく解説します。
最後まで読めば、人事事務の全体像と成長のイメージがつかめ、転職への一歩を安心して踏み出せます。
本記事のライター:伊藤えま
採用・人事歴10年以上。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)取得済み。採用統括責任者として現場で得てきたリアルな知見を、発信している。
人事事務とは?基本の仕事内容と役割

人事事務は、企業の「人」に関する幅広い業務を支える事務職です。採用や労務管理、社員サポートなどといったバックオフィス業務を通じて、社員が安心して働ける環境を整える役割を担います。ここでは「人事事務とは何か」を基礎から整理していきます。
人事事務の定義
人事事務は、企業における「人材」の採用から育成、管理まで、多岐にわたる業務をサポートする事務職です。一般的な事務と比べて、従業員の採用から退職までのライフサイクルを通じて関わる点が特徴です。
たとえば、求人票作成や面接調整など採用活動だけでなく、勤怠管理や社会保険の手続きなど労務に関する作業も担当します。企業によっては、採用に特化していたり、労務・総務と兼任していたりと担当範囲は異なります。共通しているのは、人材に関する情報を正確に扱い、円滑に組織が機能するよう支えることです。
人事事務は組織運営の基盤を作る縁の下の力持ちといえるでしょう。
人事事務と労務事務と総務事務の違い
一見似ている「人事事務」「労務事務」「総務事務」ですが、それぞれ役割が異なります。以下の表で整理するとわかりやすいでしょう。
区分 | 主な役割 | 具体的な業務例 |
---|---|---|
人事事務 | 採用や社員管理をサポ-ト | 求人票作成、面接日程調整、研修運営補助、福利厚生案内 |
労務事務 | 労働条件や雇用契約の管理 | 勤怠管理、給与計算、社会保険・年末調整手続き |
総務事務 | 会社全体の環境整備を支援 | 備品管理、社内規定整備、社内イベント運営 |
企業によって、人事事務が担当する業務範囲に違いがあり、人事と労務・総務をまとめて「人事総務」として募集するケースもあります。違いを理解しておくと、ミスマッチを防ぎ、納得のいく転職活動やキャリア形成を進められるでしょう。
人事事務の具体的な業務内容

人事事務の仕事は、社員の活躍を支える、多岐にわたる業務に対応します。採用活動の補助から勤怠管理、給与計算、労務手続きまで、会社運営に欠かせない多方面にわたる業務があります。ここからは、人事事務の具体的な仕事内容を詳しく見ていきましょう。
採用関連業務
人事事務の代表的な役割の1つ目が採用関連業務です。
企業の採用活動は、会社の将来を左右する重要な仕事であり、その裏側を支えるのが人事事務の役割です。具体的には、応募者とのやり取りや社内との日程調整など、細かなサポートや対応が求められます。
主に以下のような業務内容があります。
- 求人票の作成:募集要項の整理、求人媒体への掲載鉄続き
- 応募者対応:応募書類の確認、メール・電話や求人サイトでの連絡
- 面接調整:候補者と面接官のスケジュール調整、会議室予約
- 内定者フォロー:入社案内の送付、フォローメール配信、問い合わせ対応
採用活動は、繁忙期に業務が集中するため、迅速かつ正確な対応が不可欠です。同時に、応募者にとって企業が最初に接する「窓口」として、常に誠実で丁寧なコミュニケーションを求められる役割でもあります。
労務管理
人事事務の役割2つ目は、労務管理です。労務管理とは、従業員が安心して働けるよう、労働条件や給与に関する事務作業をすることです。特に給与や勤怠に関する業務は社員の生活に直結するため、正確さが重視されます。
代表的な業務を整理すると以下のようになります。
業務区分 | 主な内容 | ポイント |
---|---|---|
勤怠管理 | 出勤・退勤・休暇の確認 | 休暇申請や残業時間の集計に注意 |
給与計算補助 | 基本給・残業代・控除の確認 | 数字の入力ミスは大きなトラブルにつながる |
社会保険関連 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の手続き | 法改正への対応が必要 |
年末調整 | 各種控除の確認・入力サポート | 毎年秋冬が繁忙期 |
多くの数字を扱うため、正確性を担保するためのプロセス構築力と、期日を遵守するための期日管理能力が不可欠です。
社員サポート・事務的サポート
人事事務の役割3つ目は、社員一人ひとりが快適に働ける環境を整えるサポートです。業務範囲は幅広く、入社から退社までのライフイベントに寄り添うのが特徴です。
具体的に以下のような業務があります。
- 入退社手続き:雇用契約書の準備、社員証や備品の手配、退職の手続き
- 福利厚生関連:各種制度(住宅補助・健康診断・育休制度など)の案内と運用
- 研修サポート:新入社員研修や社内研修の運営補助、資料準備
- 書類・データ管理:人事システムへの入力、社員情報の更新
- 問い合わせ対応:社員からの労務・福利厚生に関する質問への対応
一見すると目立ちにくい業務ですが、社員の満足度や働きやすさに直結する非常に重要な役割を担っています。細やかな気配りと「人を支えたい」サポート精神を活かせる仕事です。
人事事務に向いている人4つの特徴

人事事務は正確さや丁寧さが求められる一方で、人と関わる機会も多い仕事です。そのため、事務処理能力だけでなく、協調性や柔軟な対応力も求められます。具体的には、次のような特徴を持つ人が向いています。
- 人と関わることやサポート役にやりがいを感じる
- コツコツした作業や正確な作業が得意
- 専門知識を学び続けられる
- 守秘義務を守れる
それぞれの特徴について詳しく解説します。
人と関わることやサポート役にやりがいを感じる
人と関わるのが好きな人にとってやりがいを感じやすい職種です。人事事務は「人」と密接に関わる仕事で、採用候補者とのやり取りや社員の相談対応、社内研修の補助など人との接点が多くあるからです。
人事事務で活かせる「人との関わり方」は以下のようなものがあります。
- 候補者対応:丁寧なメールや電話対応で企業の印象を左右
- 社員サポート:福利厚生や労務に関する相談窓口として信頼を築く
- 社内調整:他部署や上司との調整役としてコミュニケーション力を発揮
「人を支えることで存在意義を感じたい」との気持ちや、裏方としてチームの成功を支えることにやりがいを見出す方に最適な仕事です。
コツコツした作業や正確性が得意
人事事務は、コツコツ作業に集中でき、数字やデータを丁寧に扱える人が向いています。給与計算や勤怠集計など、一つのミスにより社員の信頼を失う可能性もあるため、正確さが不可欠です。
以下のようなスキルが活かせます。
スキル | 具体例 | 活かせる場面 |
---|---|---|
数字への強さ | 集計や計算が得意 | 給与計算・勤怠チェック |
注意深さ | 小さな誤字や数値の違いに気づける | 社会保険や書類作成 |
継続力 | 毎月同じ業務をこなせる | 月次処理や年末調整 |
給与計算に一度でも間違いがあると、社員は会社に対し不信感を抱き、モチベーションの低下につながるかもしれません。そのため、ミスがないことが大前提とされています。
細部への高い注意力と、地道な業務を面倒くさがらない真面目さが、人事業務の分野で大きな強みを発揮します。
専門知識を学び続けられる
人事事務は単純作業のように見えて、法律や制度に関わる知識が欠かせません。労働基準法や社会保険制度、税制改正など制度は毎年のように変わるため、常に最新情報をキャッチできる人が活躍できます。
学ぶべき分野
労働法関連:労働基準法、育児・介護休業法など
社会保険制度:健康保険、厚生年金、雇用保険の仕組み
税務知識:年末調整や源泉徴収に関する知識
知識は入社時点で完璧である必要はありませんが、常にアップデートが求められるため、向上心を持って学び続ける姿勢が評価されます。「勉強が苦手」と感じる人でも、実務を通じた実例と照らし合わせることで、スムーズに理解し、知識を得られます。
守秘義務を守れる
人事事務は守秘義務を徹底できる人でなければ務まりません。社員の個人情報や給与、健康状態などデリケートな情報を扱うため、絶対に外部に漏らさないことが不可欠だからです。
- 「家族や友人に話してしまう」などの無意識な漏洩もNG
- 個人情報保護法や会社規定に沿った適切な管理が必須
- 信頼を損なわないために、高い倫理感と責任感が必要
- 状況に応じた開示すべき情報を瞬時に判断できるスキルが必要
人事事務は「会社の信頼を支える役割」を担っているため、情報管理を徹底できることが適性の大前提といえるでしょう。
人事事務のキャリアパスと将来性

人事事務は単なる事務職ではなく、会社の人材戦略を支える重要なポジションです。業務の幅が広いため、経験を積むことでキャリアの選択肢も多様に広がります。ここでは、年収相場、キャリアパス、将来性について解説します。
人事事務の平均年収・給与相場
一般事務と比べると、人事事務は業務の専門性により、年収がやや高めに設定されることが多く見られます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、一般事務の平均年収は約280万円ですが、人事事務は約302万円でした。
経験年数や企業規模、責任範囲によりさらに高額になる場合もあります。求人情報での提示年収も幅広く、勤務地や業界による差も大きいことがわかります。
未経験でもキャリアを積むことで昇格やキャリアアップを見込めるため、安定した収入を目指せる職種です。
人事事務のキャリアパス|ステップアップを解説
人事事務は事務作業にとどまらず、経験を積むことで幅広いキャリアパスが開けます。よくあるステップは以下の通りです。
書類作成や勤怠管理、面接スケジュール調整など補助業務を担当
給与計算や社会保険手続きの管理、採用面接の運営補助など実務中心を担当
労務制度の改善提案や社員研修プログラムの企画、組織戦略に関わる業務
基礎的なスキルを身につけた後、労務管理や採用担当として専門性を高めることで、人材企画や人材育成など経営に直結する業務にも挑戦できます。また、企業規模や業界によっては、マネジメント職や管理職への道も開かれ、長期的に安定したキャリア形成が可能です。
未経験からでも段階的にスキルを積むことで、専門性の高い人事職として成長できるのが特徴です。
人事事務の需要・将来性
人事事務は、企業の人材戦略を支える重要な職種であり、需要は今後も高まると考えられます。
企業が人材不足により人材戦略を強化する中で、正確な勤怠管理や給与計算、採用サポートなどの専門業務が不可欠になっているためです。さらに、働き方改革やテレワークの普及、ダイバーシティ採用の拡大により業務範囲が広がり、効率的な人事事務処理が企業競争力の一部として重視されています。
中小企業でも社会保険手続きや給与計算の専門知識を持つ人材は高いニーズがあり、未経験でも研修やOJTを経て採用されるケースが増えています。また、労務管理や採用補助だけでなく、人事企画や社員教育など経営に直結する業務へのステップアップも可能です。
単なる事務職ではなく、企業の成長を左右する人材戦略の根幹を担うのが人事事務です。その重要性から、将来にわたり安定して求められ続ける、将来性の高い仕事だといえるでしょう。
人事事務のよくある質問や疑問
人事事務のよくある質問や疑問をまとめました。
- 人事と総務・労務の違いは?
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会社によって役割が異なる場合もありますが、基本的には下記のように分類されます。
- 人事:採用や評価制度、社員育成など「人」に関わる業務
- 労務:給与計算や勤怠管理、社会保険手続きなど法制度に基づく管理業務
- 総務:備品管理や社内行事運営、契約書管理など幅広い事務全般
- 人事事務はルーティン業務が多い?
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基本的にはルーティン業務が中心ですが、採用や研修、制度変更による臨時対応も発生します。定形作業と突発対応の両方をバランスよくこなせる能力が求められます。
- 人事事務の繁忙期はいつ?残業は多い?
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繁忙期は以下が一般的です。
- 採用関連:春・秋の入社シーズン
- 給与・労務関連:月末や年末調整の時期
- 研修関連:新入社員研修や各種教育プログラムの時期
残業は繁忙期に集中する傾向です。
- 人事事務は派遣・契約社員でもなれる?
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未経験の場合、派遣や契約社員としてスタートするケースも多くあります。経験を積むことで正社員登用や、キャリアアップも十分に可能です。
まとめ|人事事務とは人材戦略を支える重要な職種
この記事では、人事事務の仕事内容や将来性について解説しました。
人事事務は、採用・労務管理・社員サポートなど幅広い業務を通じて、企業の人材戦略を支える重要な役割を担います。経験を積めば、労務管理や採用担当、人事企画など専門性の高い仕事にも挑戦可能です。
未経験からでも段階的にスキルを身につけられるため、興味がある方はまず求人情報をチェックし、一歩を踏み出してみましょう。
